【序】
昨年のこの場で「北京オリンピックは成功するか。胡錦濤政権の笑顔の友好路線はいかにも怪しい。実は思惑を含んだものではないか」というお話を皆さんにしました。
「自己中心、ありがとう、ごめんなさいを絶対に言わない、大声でうるさい、すぐに居直る、援助などでもらった
資金でも自分のもの顔、等など、中国人の文明度は世界中で批判の的です。
いわば、古女房の様な、不愉快だが別れるにも別れられない関係を日中はいつのまにか築いてきてしまっている。ところがその女房が、最近いやに愛想がいい。こんな怪しい話はない」と申し上げました。
その思惑とは、共産党の
中国が、資本主義市場でも米国を抜いて世界一の国家になる、という強い決意の現われではないかということです。
その象徴であったオリンピックは盛大に成功して終わりましたが、実はむしろその後の半年間で、Xデーがかなり近づいた様に感じています。
【「G2」の議論】
最近、オバマ政権の中でG2の議論がさかんにされているのをご存知でしょうか。
G2とはカーター政権の外交関係の大統領補佐官だったブレジンスキーがオバマ大統領の選挙活動で協力していたのですが、この1月に提唱したアイディアで、その後、米国内で賛否両論が飛び交っています。
一言でいえば、G2とは、米中2ヵ国で世界経済の諸問題を話し合う会談を、非公式に継続的に開催すべき、という主張で、G7, G12, G20などの主要国財務相会議(首脳会議)よりもアメリカにとって重要だ、という内容です。
事実、オバマ政権になって、2月にヒラリー・クリントン国務長官が、最初の訪問国として日本&中国を訪問(アメリカでは日本や
韓国を訪問した事が報道されず、中国のみ国名が出た)したのに続き、
6月2日に ガイ
トナー財務長官が訪中し、胡錦濤主席や温家宝首相と会って、アメリカの財政赤字を10%から3%に減らします、といった約束をしています。
これまで、中国の元の
為替操作はケシカラン、元をもっと高くしろ、と主張していたのとは大違いの低姿勢でした。
この時にアメリカサイドから中国に、G2の提案をした、とも言われています。
ではなぜG2なのか?
このデータを見てください。
アメリカ 中国 日本 EU 世界合計
GDP 1430兆 440兆 490兆 1840兆 6000兆
外貨準備高 0.07兆 1.8兆 1.1兆 0.6兆 7.2兆
国債発行高 3.2兆 --- 10兆 --- ---
米国債保有 7600億 6800億
(単位=米ドル)
米国の国債発行高は、現在3兆ドルです。
オバマ大統領は、GMや
金融機関の救済のために、大規模な国から支出をして、一時期、国有化する、と宣言しました。これがうまくいくかどうかは、オバマ政権の死命線です。
まさにアメリカを代表する企業が次々国有化され、We are all Socialists (俺たちみんな社会主義者)という見出しがニューズウィークの表紙に載りました。
では、この資金をアメリカ政府はどこからもってくるのか。
実は、アメリカ政府は最近、国債の発行高の上限を10兆ドルまであげる決定をしました。
日本は世界最大の財政赤字国で、赤字の
借金は国債によるものですが、これはすべて日本国内(国民や日本企業)からの調達なのです。
ところが、アメリカの国債は、ほとんどが海外からお金を集めています。
では、今、アメリカの国債を誰がもっていて、これからの緊急増分(おそらく毎年2兆ドルずつ増やす予定)を、世界の誰が買うのか、買えるのか、という話になります。
アメリカは、世界最大の米国債保有国であり世界最大の外貨準備高を持つ中国に買ってもらうしかない、と考えています。
それがG2の根拠です。 (日本は放っておいてもアメリカのいいなりになる、という発想なのは言うまでもありません)
【アメリカと中国の関係】
アメリカと中国の関係は、
complex Inter-dependency (複雑な相互依存)と呼ばれています。
それは、アメリカは中国からの資金がないと、経済破綻から回復できない。
もし中国が米国債を売りに出したら、国債の価格は下がり、ドルが暴落し、
金利が上昇してアメリカ経済は崩壊してしまいます。こうなると原爆やテロと同じ脅威です。
一方、中国も、こんなに買ってしまった米国債の価値が下がれば、汗水たらして貯めこんだ人民の資産が目減りするので、簡単には動けません。
したがって、中国にはアメリカの国債を売らずに、しかも新規の国債も買ってほしい。そのための中国の資金は、現在の中国が貯めこんでいる外貨準備に加えて、今後の貿易収の黒字(中国が輸出でもうける)部分から、という話になります。
アメリカは中国が輸出をし、もうけ続けてもらうしかない、というわけです。それなら元が安いのもしばらくはしかたないか、というわけです。
【結論】
ここ数年は、中国の顔色次第で米国経済の生死が決まる=世界経済が動く、
中国経済の成功がないと米国の経済は成功しない、
という図式になってしまった、ということです。
(例)
中国の貿易収支(黒字)
経済危機にもかかわらず、中国は昨年後半、大幅な輸入制限
をしたので、何と、今年の1月まで貿易収支はずっと増加
(390億ドル)していたが、2月に急減(48億ドル)した。
この影響で、3月以降、アメリカ国内の長期金利が 2.2→ 3.4% に跳ね上がった。
中国の貿易黒字が減ると、アメリカの金利が上がり、アメリ
カ企業が困る、という図式。
【中国は「してやったり」、か?】
いえいえ、実は中国はG2に反対しています。
温家宝首相は、「中国は中国しか救えない」と宣言しました。
世界経済の手助け、の目的で資本主義に取り込まれてはたまらん、との判断です。
ここしばらく、アメリカと中国の駆け引きには、目が放せません。